AGRA

命名 愛の町

1日目

 この町には、昔のインドの王様がお后様のために建てたというバカでかい宮殿(墓)「タージ・マハル」がある。自分の宮殿の隣に后の宮殿を建て、死後はそこに眠り、自分たちの愛が永遠であることを祈ったのだそうな。「タージ・マハル」の建築費と建築年数は莫大なもので、多くの庶民たちの税と労力が使われた。国が傾くほどの財力を注いだそうだが、結局その宮殿は王様の生前に完成しなかった。  まったくバカな話であるが、その王様が国を傾けてまで、一人の女のために宮殿を作ろうとしたのがすごいと思った。

愛想のよいラジャ

AGRAの駅から降りると、例によってガイドたちの大群が観光客たちを取り巻いてきた。ガイドを雇う気はなかったが、しつこくついてくる一人のガイドに根負けして、そいつを雇うことになった。彼の名は「ラジャ」とか言った。まだ、若い男で、やけに人当たりがよいのが印象的だった。妙に人懐っこい笑顔で、この笑顔としつこさでガイドさせられてしまった。今まで出会った中に最高の客引きだった。「ラジャ」は日本語が少し話せ、彼のリキシャー(人力)でアーグラーを回った。 「タージマハル」を見て、楽器屋、服屋を回った。途中「ラジャ」のリキシャーにも載せてもらい、ちょっと漕がせてもらった。服屋では、クルター(インド服)を一着オーダーメイドした。3000円也(990Rs、高いのか安いのか?よく分からん)。最初1万2000円とか言っていたから7.5割引きなのだが、そこまで引かれると逆に怪しい。

2日目

 Gと別れた。彼は次の町へ行き、俺はこの町に残った。「20日にヴァラナシの駅で会おう」と約束して、自分の道を行くことにした。なんとなく合田に引っ張られて旅行している気分が不甲斐かった。そして、「タージ・マハル」この町で一人の女を愛することとは何なのか、考えて見たかった…。 タージマハルに行くと、また「ラジャ」がいた。今度は別の観光客を案内していた。「タージ・マハル」でしばらくたたずむ。

結婚式の巻

 俺は踊っている。なんでか踊っている。チップを渡すと、合奏隊がリクエストの曲を演奏してくれる。町の人々がリクエストし、みんなが踊るのに混じって踊っている。なんだかわけわからないが、踊っている。  この結婚式はすごい。徹夜で町中を行進し、踊って呑んでの大フィーバー。どうも大富豪の結婚式らしいが、なんだか、知らない世界にいるようだ。

なんで結婚式にいるのか?詳しく話すと長くなるが、要約するとこうなる。 アーグラでレンタサイクルを借りて町を走っていると、「タパ」という若者に誘われ、アーグラの有力者の家へ連れていかれる。その日アーグラから120km離れた「ゴワリアル」という町で結婚式があるらしく、行ってみないかと誘われる。汽車で一路ゴワリアルへ。そして徹夜の結婚式フィーバー。
行進はようやく町を一周し、俺達はゴワリアルの邸宅へ付く。そこでもまた、呑んで騒いで…。インド人のおっさんが、「一晩ケツを貸さないか」というのが、冗談なんだか本気なんだか分からず恐い。日本人のお姉さん2人組みとも会うが、あまり話も出来ず、おっさんと呑み下手くそな英語で何をしゃべっていたのか。食べて呑んでその日は、その家に用意された宿泊施設で眠った。

3日目

ローカルバス

「タパ」たちは貧乏なのか、帰りはローカルバスだった。これが辛い。汽車で2時間程度だったのが、5時間は走っただろうか?途中すし詰め状態で、蒸し風呂状態。これは満員ですよ、というところにまだ人が乗り込んでくる。窓から、しかも鉄策があるのにその隙間から入ってくる。気分は通勤時間の山の手線の車内をサウナにして、その中に5時間…。座れたのが救いだったが。もう2度とインドのローカルバスには乗るまいと思った。

4日目

タージ・マハル

よーく寝た。起きたらもう夕方だった。タージマハルへ行ってみたが、入れてくれない。5時からは100Rsのチケットを買ってこいとか?なんだか、どこで買うのかよく分からんし、なんかその割高料金を払うのもあほらしい。だが、夜のタージマハルをどうしても見てみたい。…とそこに雨どいがあるではないか。俺は壁をよじ登って不法進入してしまった。ここ数日の俺はちょっと危険な男だった。下手したら、身包みはがされてた、あるいは犯罪者?とにもかくにも夜のタージ・マハルへ入った。 月がきれいだった。俺はタージマハルの床に寝転び思った。女のために、ここまでのことをしようと思うの何なんだろう。ついこの前までの熱い恋を思い出しながら。この墓を見ていると、皇帝シー・ジャハンと、そこまでさせたムムターズの魅力を感じる。俺にはシー・ジャハンほどの富も権力もない。だが、もてるすべてを賭けてみた。すべての力を注いでみた…。
ふと便意を催しトイレに行くと、たっぷり2日分、よく出ました。結婚式以来生水平気で呑んでたから、ちょっとゲリ気味。とりあえず、決心!もっといい女を探そう。It’s all right.

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